10月27日午後15時より泉佐野泉南歯科医師会学術講演会に参加して参りました。演題は「歯科から食育を発信しよう!~噛むことの効用とスポーツドリンクの虚像~」です。御講演いただいいた講師の先生は、京都府福知山市にて医療法人杉岡歯科医院理事長の杉岡真一先生。先生は矯正治療を学ばれるなかで、小児の体と心の発育に食べ物や食べ方が影響をもたらしているとお考えになり、歯科医師として食育の大切さを訴えられているお一人です。
講演はまず先生の御父上の教育方針から。鶏を一匹買ってきて、自宅にて捌き、骨や羽以外はすべていただくというもの。先生ご自身も幼少の頃だったこともあり「かわいそうなことするなぁ」と思われたそうですが、御父上の「それは卑怯だ、誰かが捌くことをするから私たちは食べられる、目を背けてはいけない」とのお言葉に胸をうたれたそうです。私もまさしく食育の真髄であると感じました。
また近年の児童や幼児の食事事情も話されました。柔らかくて甘くて口に入れた瞬間に味がわかるものを小さい頃から食べている子が多い。すると給食などで硬めの食べ物が出ると食べられない、美味しくない。将来「噛む」ということを敬遠してしまう。その弊害が多くあります。

①唾液が分泌されにくくなる

唾液は人間にとってとても重要で、抗菌作用により様々な菌やウイルスを無力化します。高齢の方で唾液が出にくくなり悪影響を及ぼすなどはメディアでもとりあげられております。子供でも同じです。食中毒予防にさえ効果があると示されていました。その大切な唾液は唾液腺という袋から出てきます。レモンや梅干しを想像するだけでキューとなる、あれが分泌されている証拠ですが、顎を動かしたり食べ物を噛むことでも分泌されます。噛むことを控えてしまうと唾液を出す機能も衰えます。

②顎の成長

「生物は適正なストレスが掛かると、それを克服しようと成長する(ハンス・セリエのストレス学説)」そうですが、確かに軟食の文化が入る以前の文明では顎がしっかり発育していました。最近の子の歯列をみていると上の歯が下の歯に深く被さっていたり、上の歯が前方に飛び出していたり、また隣の歯と重なっていたりしています。これにも「噛む」ことが関連しており、特に前歯でものを食いちぎることをしなければこのような傾向に陥りやすいようです。顎の骨や筋肉を噛むことにより鍛えられます。また口が常に開いていると口呼吸により様々なリスクも伴います。

③関節等全身に関わるもの

本来加齢により起こるロコモティブシンドローム(locomotive syndrome)(:運動器障害)をが成長発育過程での劣成長により、早期に発現してしまう。結果身体機能・運動機能にも影響するとのこと。ひいては健康長寿にも将来影響を及ぼすことになります。(昔の人より近代人が寿命が長いのは、医療・衛生面の発展や事故等の減少が深く関わっていますので、一概に平均寿命の比較では答えは出ません)

④食べる感覚の減退による心の問題

同じ栄養価の固形食と粉末食をマウスにあたえた結果、粉末食のマウスのみ血糖値上昇・異常行動・肥満になった実験があります。モノを噛んで食べるという雑食哺乳類のもつ本能を否定するわけですので、そのストレスは計り知れません。

次回は引き続き杉岡先生の御講演後半、ジャンクフードとスポーツドリンクについてです。

日根野谷歯科医院